視聴覚障害者の方にも映画や演劇を楽しんでもらえるよう、「夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年」にはバリアフリー字幕と音声ガイドがついています。
もともと僕は、こういう分野の世界があることを知りませんでした。もっと言えば、視聴覚障害の方が映画を観る権利を奪われていたことすら気付いていませんでした。。
そしてバリアフリー制作体験は、とても刺激的でした。最初は、「ただ映像に字幕をつけて、解説音声いれるだけでしょ」って思っていました。でも、それは全く違うことに気づかされました。
バリアフリーの字幕および音声ガイドには、それぞれ制作のスペシャリストが担当していています。バリアフリー字幕の監督、音声ガイドの監督といっても過言ではありません。もちろん私も「夜明け前」の監督として、監修のような立場で立ち会います。
映画のナレーションや、セリフだけでありません。映像の描写説や、時間経過、画面から伝わるの雰囲気まで、あらゆるところを分析されてしまう感じです。これまで作品と長く付き合ってきた自負がある監督としても、この段階で初めて気づくことも多々ありました。自分の粗やミスをこの段階で発覚したりもしました。また試写の段階では、当事者の方たちに来てもらい、実際に映像を見てもらいます。
そこで細かくヒアリングしながら、どういう風にこのシーンでは情報が伝わったのか実感を確認していきます。こうやって映像を読み解いてもらう作業は、作り手としてはとても嬉しく、刺激的な体験でした
この体験ができたおかげで、映画を制作段階で、バリアフリーを意識することができるようになりました。多分こういう風に思い至る気持ちは、僕だけではないと思います。
「夜明け前」の上映会は、いまコロナで止まっていますが、かなりの頻度でバリアフリー対応の映画上映会が行われています。バリアフリ字幕・音声ガイドを必要とする人たちと一緒に映画を観るという体験が増えました。必要としない人にとっても、バリアフリー映画はだんだんと認知されれつつあるなと実感しています。
いま、「夜明け前」をバリアフリー制作してくれたパラブラ株式会社が、期間限定でドキュメンタリー映画5作品を映像配信しています。
https://palabra-i.co.jp/uchidokyu/
じつは僕も一部業務をお手伝いしています。ずっと観たいと思っていた「老人と海」も配信されています。今回、僕は「老人と海」のバリアフリー音声ガイドミックス版を事前に観ました。
音声ガイドのナレーター、どこかで聞いたことのある声でした。きっとみなさんも「あー!って思い出す、あのアニメにも登場する声でした。面白かったです。